特殊外来・ケア
参考になるHP:
がんと生殖医療研究会
がん治療と妊娠~がん治療後の将来を見据えて~
厚生労働省
若年乳がん患者のサバイバーシップ支援プログラム
若年性乳癌 拓かれた若年乳がん診療を目指して
乳がんと診断されたかたの生殖機能(子供を作る機能)の温存に関するカウンセリング
がんと妊孕性外来:火・木午後(要予約)
乳癌は若い方もなりますが、治療の目標は完治です
乳がんは他のがんと比べて、「若い方も罹患する可能性のあるがん」と言えます. 40歳以下の出産可能な年齢でも乳がんと診断されることは稀ではありません. 他方, 治療の進歩に伴って完治を目指せる病気になってきました. 若くして乳癌と診断されても, きちんと乳癌を治し長生きしていただくことが治療の目標となります. そのためには乳癌の種類や進行度に合わせた集学的な治療(手術だけでなく, 薬物療法や放射線治療)が必要です. 再発させないように補助療法として行われる薬物療法は,種類や投与期間は患者様ごとに異なりますが, ほとんどの患者様が受けることがガイドラインで推奨されております。
乳癌の治療の影響で子供が産めなくなる可能性があります
薬物療法は再発を抑える効果があるのはもちろんですが, 少なからず副作用があります. そのひとつが女性の生殖機能への影響があります. 具体的には月経が停止し閉経してしまったり,月経は継続しても5年または10年といった薬物療法の期間は子供を作れないというものです. 上述のとおり, 若い方も罹患する可能性がある乳癌は「これから子供が欲しいと思っていた」ところで診断されることもあります. そして, その後の治療により「乳癌は治った」けれど「子供を作るのはあきらめないといけない」といった状況が訪れる可能性があるのです.
生殖機能(子供を作る機能)の温存に関するカウンセリング
もちろん, そういった患者様皆様に子供を産めるようにすることは現時点でも不可能です. しかし,近年進歩した不妊治療の技術を利用することで, 子供を産める可能性を温存することもできるようになってきました. ただし, 解決しなければならない問題点やわかっていないことがまだまだ多い領域です. 患者様の子供が欲しいというお気持ちと乳癌を治したいというお気持ちの両方を大切にして,スムーズに治療を行えるように専門の医師や看護師がカウンセリングを行っております. そして, 本当に必要かつ可能な場合(患者様皆様に簡単にできるわけではありません)は生殖医療専門医と連携して患者様の子供を作る機能を乳癌の治療(特に薬物療法)開始前に温存することも行っております. ご希望のある場合, 院外で治療された方でもカウンセリングを受けることは可能です. 担当の先生にご相談してご予約ください. 乳癌の診断時なるべく治療開始前に受けることをお勧めします.
乳がんと遺伝について
家族性乳がん相談外来:火午後(要予約)
もし,娘さんがいらっしゃる場合「将来,この娘も乳がんになるのでは?」,そんな不安を良く耳にします.
乳がんは,遺伝子が正常に機能しなくなることで発生します.そのメカニズムはまだ十分にわかっていませんが,乳がんの発症は遺伝的な要因や環境要因(生活習慣,食事,運動,妊娠,出産など)と関連すると言われています.
これまでの研究から,いくつかの遺伝子変異が乳がんの発症と強く関連することが明らかにされています.遺伝が原因で乳がんを発症する割合は約7-10%と考えられており,その原因遺伝子の70%が,BRCA1とBRCA2遺伝子であることが明らかにされています.
BRCA1あるいはBRCA2に生まれるつき遺伝子変異がある場合,70歳までに乳がんを発症する確立は約60%と非常に高率です.また,BRCAに変異のある場合には卵巣がんの発症リスクも高くなり,70歳までに卵巣がんを発症する確立は約20-40%と報告されています.このため,BRCA遺伝子変異を《遺伝性乳がん・卵巣がん症候群》と呼んでいます.
遺伝性乳がん・卵巣がんでは,外観上の特徴はありませんが,以下にあてはまる場合は,詳しいリスク評価を受けることが勧められています.
◻︎若年性乳がん(目安:40歳以下で診断された)
◻︎トリプルネガティブ乳がん(ホルモン受容体もHER2も陰性の乳がん)
◻︎(お1人の方で)2個以上の乳がん
◻︎卵巣がん
◻︎男子乳がん
◻︎乳がんを発症したことがあり,かつ,次にあてはまる血縁者がいる
・50歳以下で乳がんを発症
・卵巣がんを発症
・乳がんまたは膵がんを発症(2人以上)
遺伝性乳がん・卵巣がんでも,一般的な乳がん・卵巣がんと基本的には同じで,早期発見・早期治療が有効です.遺伝性乳がん・卵巣がんと診断された方には継続的で詳しい検診が推奨されています.また様々な状況を配慮した上で,リスク低減のための乳房切除や卵巣・卵管切除を選択肢として検討することもあります.
*受診希望の方は,主治医・または外来窓口にご相談ください
当院では, 遺伝性乳癌に対するリスク低減のための予防的乳房切除術を実施しています.
詳細については, 主治医までお問い合わせ下さい.
リンパ浮腫
乳癌術後のリンパ浮腫は,わきにあるリンパ節を切除することや放射線治療によるリンパ組織や周辺の組織の障害によって,今までその中を流れていたリンパ液の流れが悪くなったり、滞ることで生じるむくみのことです.
発生頻度は,5〜10%と報告されています.必ずしも術後早期に発症するものではなく,術後10年以上経過してから発症する場合もあります.
リンパ浮腫は,いちど発症すると完治が難しく,浮腫が進行すると日常生活に支障をきたすことがあります.蜂窩織炎を合併する場合もあります.そのため,発症予防や,発症早期に発見し適切な対処をして悪化させないようにすることが大切です.
◆予防のため,日常生活で注意すること
・園芸や水仕事は手袋を着用し,手荒れを避ける.
・急激な日焼けを避ける.
・剃毛するときは電気カミソリを使用する.
・虫さされや怪我をしないように気をつける.
・手術した側の腕で採血や注射,血圧測定,鍼灸は避ける,重い荷物は持たないなど.
・乗り物で長時間同じ姿勢でいること,気圧の変化は腕がむくみやすくなるため,ときどき
腕の曲げ伸ばし運動をする.
・急激な体重増加を避ける.
手術した方の腕がだるい,重いと感じたら,手術した腕に負担がかかっているサインです.生活を思い起こし,負担をかけたと思う行為を改めましょう.
リンパ浮腫を発症してしまった場合の治療は,①スキンケア,②医療徒手リンパドレナージ,③圧迫療法,④圧迫下での運動療法に日常生活指導を加えた保存的治療です.
当院では,患者さんがケアを継続して行えるよう,多職種が連携してセルフケアや日常生活指導を行っております.形成外科ではリンパ浮腫の検査,診断,治療(リンパ管静脈吻合などの手術療法も含む)を行っております.また医療リンパドレナージセラピストである看護師が医師の指示のもと,個別対応をしています.リンパ浮腫の症状のある方はご相談ください.
岡山大学病院 リンパ浮腫専門ケアチーム
カノン・コードHP:
術後の下着について
術後の社会復帰にあたって,手術後のボディラインを整えたり,からだの左右のバランスを整えるために,ブラジャーやパッド選びが大切になってきます.
当院では,乳腺外科外来に補正下着専門の業者が来院し,各種商品の展示や,注文を受け付けています.
お気軽に外来看護師までご相談ください.
乳房再建術後には,「どのような下着がいいのかわからない」「どこで相談したら良いかわからない」といった声が良く聞かれます.このような声に応えるべく,当センターでは2008年より株式会社ワコールとの共同研究を実施し,全国に先駆けて乳房再建術後のオーダーメイド下着に関する研究を行いました.
この研究に下着コンサルタントとして参加して下さった岡いずみさんは,2014年「カノン・コード」を開業し,乳房再建術後の下着選択を支援する日本初の“ブレストカウンセラー”としてご活躍されています.